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豆腐屋は、社会に、
未来に何ができるか。

HIROYUKI MIYATAKE

代表取締役社長 宮竹 宏幸

豆腐屋の長男に生まれて

昔から、親父はかっこいい人でした。仕事に向かう姿勢も、ちょっととっぽいのに、周りから一目置かれる雰囲気も。何より「お前んとこの豆腐美味いな」と友達に言われるたびに誇らしく、物心ついた頃には自分も親父のような豆腐屋になるのだと思っていました。大学時代から家を手伝い、卒業後は正式に社員に。その頃、NHKのドキュメンタリーの取材が入り、私たち親子が共に働く様子を撮影していました。さぞ良い感じに仕上がっただろうと期待して放映を見ると、親父が聞かれていました。「なぜ息子さんをもっと朝早く起こさないのですか」。私も毎朝5時から働いていました。しかし、豆腐づくりの本当の開始は午前2時。親父はそこから働いていたのです。テレビの中の親父は「なぁに、豆腐をつくる心がわかれば自然に起きてくるわいね」と一言。私は心底自分が恥ずかしくなり、それからは誰よりも朝早く現場に入りました。豆腐屋としての自分が本当に歩き始めた瞬間でした。

豆腐をつくる心を磨く。

10年ほど経ち、豆腐がきちんとつくれるようになると、家業と豆腐業界の新たな展開を模索するようになってきました。「何か、家業の外の世界からヒントを得られることはないだろうか」。そんな思いで飛び込んだのが、地元の青年会議所でした。出会う人、聞く話、すべてが新鮮な体験の中で、一番強く自分を揺さぶったのが「企業は社会の公器」という言葉でした。美川タンパクが身体に良い豆腐をつくり人々の健康に貢献するのは基本中の基本。その一方で、豆腐屋として社会や業界にどんな良い価値や影響を与えられるのかを考え、実践すること抜きにうちは存続していけないのではと思うようになったのです。そのときに頭に浮かんだのが「おからの廃棄問題」でした。おからは、豆腐をつくる過程でどうしても生まれてしまう大量の副産物。食用に回せるのは1割にも満たず、それ以外は産廃となり、廃棄コストの観点からもなんとかして解決したい問題でした。

真に社会の役に立つには。

どんなに小さな豆腐屋でもできるような解決策を。そんなテーマでおからの廃棄問題に着手しました。大型乾燥機を導入すれば、長期保存できる乾燥おからとして流通させられるのは知っていました。しかし乾燥機は高く、場所もとるため小さな豆腐屋には導入が難しい。さらに大量の化石燃料を使う点からも環境に良くありません。そこで食用ではなく肥料化の道を探しました。工場内からパイプを通し、外のトラックの荷台に直接おからを積み込める設備を考案。さらに、豆腐屋ならどこでもあるボイラーの余剰熱を利用した蒸気ヒーターでパイプを温め、おからの水分量を50%まで落として肥料としての質を上げます。こうしてできたおから肥料を、今、地域の農家さんに安く売り、役立ててもらっています。始まったばかりのこの取り組みが、いつか同じ問題で困っている他社を救うことができて、業界が少しでも変わるのなら、そのとき初めて私は自分の使命をまっとうできたことになるんじゃないかと思っています。